研究紹介

循環薬理研究

循環薬理研究チームの研究ビジョンと範囲

研究ビジョン

循環薬理研究グループは、循環器疾患に有効な治療薬や治療標的を明らかにすることで、健康寿命の延伸することを目標にしています。

研究範囲

研究チームでは、現代社会で循環器疾患の発症リスクの主な原因となっている肥満や老化における代謝産物の変化に着目し、これらに関連する循環器疾患に有効な治療薬や治療標的を明らかにしすることで、健康寿命の延伸することを目標にしています。特に、これまで培ってきた薬理学、生理学、循環器学、代謝学、再生医療学に関する知見を融合・発展させたトランスレーション可能な研究を行っております。

心房細動、最も一般的な不整脈

Atrial fibrillation, AF

AFは最も一般的なヒトの不整脈であり、この有病率は人口の高齢化により大幅に増加すると予想されています。

肥満はAFを発症させるリスクです。一方、肥満の治療はAF発症リスクを低下させるため、肥満におけるAF発症のメカニズムが注目されています。AFは、心筋細胞の進行性の電気的、構造的、および収縮性のリモデリングを特徴とする持続性疾患です。

その結果、ほとんどの患者は最終的に持続性の持続性AFを発症し、これにより心疾患の罹患率と死亡率が大幅に増加し、生涯にわたる抗凝固薬が必要になります。

AFの治療における課題

しかし、AFの心臓リモデリングの分子基質の熱心な研究にもかかわらず、これまで有効な治療薬は特定されていません。

心房細動の発症における肥満に関連する代謝異常の役割

Metabolites as signaling molecules

現在では、かつて単に細胞代謝の副産物と考えられていた代謝産物が、細胞内のシグナル伝達から遺伝子発現までの無数のプロセスに直接影響を与えることができることが分かってきています。

一方、肥満などの代謝異常では心房細動などの心血管疾患を生じることが明らかになっていますが、代謝異常の心房細動発症における役割や機序は十分に解明されていません。

研究グループでは、

アディポカイン、ケトン体、インフラマソームなどに注目し、心房細動の発症における肥満に関連する代謝異常の役割の解明に取り組んでいます。

心房細動の発症における加齢による代謝変化の役割

Age-related changes in metabolites

年齢に伴う代謝産物の変化は、サーチュインとPARP酵素の両方に影響を及ぼし、エピジェネティクスやDNA修復などの多様な経路に影響を与えます。

年齢が高くなると心房細動の発症リスクが高くなりますが、心房細動発症における年齢の影響、特に年齢に伴う代謝産物の変化の影響や機序は十分に解明されていません。

研究グループでは、

酸化ストレス、NAD+代謝経路、サーチュインによる脱アセチル化、PARP1によるDNA修復などに注目し、心房細動の発症に対する代謝産物の加齢変化の役割の解明に取り組んでいます。

心房細動の発症における熱ショックタンパク質の役割

Heat shock protein, HSP

一般に、HSPは他のタンパク質の細胞内シャペロンとして機能します。HSPの枯渇は、AF患者の構造的損傷に繋がります。細胞ストレスを感知すると、熱ショック転写因子-1HSF-1)が活性化され、その結果、HSPが発現します。HSPは、HSP70およびHSP27を含む幾つかのHSPファミリーで構成されており、どちらも心保護効果をもたらすことが示唆されています。

しかし、心房細動の発症におけるHSPの役割や機序は十分に解明されていません。

研究グループでは、

HSF-1 SAP97などに注目し、心房細動の発症におけるHSPの役割の解明に取り組んでいます。

再生医療技術を応用した循環器疾患への包括的アプローチ

Cell type-specific therapy in heart

心臓はペースメーカー細胞、心房筋細胞、心室筋細胞などの様々な細胞で構成されています。これらの細胞は役割やイオンチャネルに代表される電気的興奮様式を決定する分子の発現が異なっています。また、疾患により表現型が出やすい細胞も異なっています。

したがって、疾患の表現型によってこれらの細胞を使い分けことが必要ですが、これらの細胞を患者から取得するのは容易ではありません。

研究グループでは、

患者固有のiPS細胞から分化した心筋細胞から得られたデータを人工知能などで解析し、難治性および希少疾患の病因を解明することで治療標的を見出す研究を行っています。

メタボリック症候群おける血管機能障害の機序と治療ターゲットの検討

血管機能障害

血管機能障害は生命予後不良につながります。メタボリックシンドローム症候群では血管機能障害が生じることが示唆されています。しかし、その機序や治療標的は不明です。

研究グループでは、

メタボリックシンドローム症候群では血液凝固因子であるトロンビンの活性が亢進することに着目し、メタボリックシンドローム症候群における血管機能障害の機序と治療ターゲットの検索を行っています。

 

糖尿病改善薬・SGLT2阻害薬の循環器疾患改善効果

ナトリウム・グルコース共役輸送体2SGLT2)阻害薬

インスリン抵抗性を有する症例では、虚血性心疾患や心不全、心房細動などの不整脈の発症頻度が高いことが知られています。特に、心筋梗塞に合併した心不全は予後不良であり、新たな治療手段が望まれます。最近の大規模臨床試験において、SGLT2阻害薬により、糖尿病患者における心血管死の有意な減少が報告されました。

研究グループでは、

その機序は未だ不明であるため、本研究ではインスリン抵抗性モデル動物を作成し、SGLT2阻害薬や他の候補薬による心機能保護・改善作用について、臓器連関を含めた詳細な作用機序解明を目的としています。

研究グループメンバー

薬理学・薬物療法学教室メンバー

三明 淳一朗(チームリーダー・准教授)

澤野 達哉(助教)

市原 克則(助教)

Kurniawan Agung(院生・留学生)

今村 武史(教授)

共同研究メンバー

岡村 昌宏(院生・鳥取大学循環器内科)

友森 匠也(院生・鳥取大学循環器内科)

高見 亜衣子(鳥取大学循環器内科)

中村 研介(鳥取大学循環器内科)

山本 一博(鳥取大学循環器内科)

久留 一郎(鳥取大学再生医療学)

白吉 安昭(鳥取大学再生医療学)

齊藤 源顕 (高知大学薬理学)

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