研究紹介

代謝研究グループ
インスリン作用とインスリン抵抗性

インスリン抵抗性研究(図1)

  糖尿病の薬物治療では、経口薬などによる血糖コントロールが不良である場合、インスリン注射剤を用いて血糖値正常化へ注射量を調節していきます。単純明快ではありますが、残念ながらインスリン注射をすれば必ず糖尿病が良くなるとは言い切れません。インスリン注射をしても血糖が下がりにくい場合があり、注射量をどんどん増やしていくと糖尿病合併症が進行しやすくなるなど、医師、患者さん双方にとって頭の痛い問題です。このような現象が生じる原因は多岐にわたるのですが、インスリンによる血糖降下作用が減弱する現象を一つの概念として「インスリン抵抗性」と呼んでいます。

  インスリン抵抗性を治療するためには、まずその発症機序を、さらにはインスリンがどのようなメカニズムで血糖を下げるのか、その作用機序を知らなければなりません。ここでは培養脂肪細胞を用いて、血糖降下というインスリン作用を(目で)見る研究の一端を紹介します。

 

  血液中の糖は、脳や内蔵、筋肉などの細胞内に取り込まれることによって消費され、血糖値が低下します。グルコースなどの糖類は親水性であるため、細胞膜を通過することができません。では、どうやって細胞内に入るのか? それは、糖輸送体と呼ばれる蛋白質分子が細胞膜を貫通し、糖だけを細胞内に取り込めるチャネルを作るからです。この糖輸送体にはいろいろな種類がありますが、インスリン作用に最も大切なものはGLUT4Glucose transporter type-4)で、筋や脂肪組織に特に多く存在しています。インスリン刺激によって、細胞内の核周囲(図1左)から細胞膜表面へ移動(図1右)して糖を取り込みますが、インスリン刺激がなくなると細胞膜から外れて、再び核周囲に戻って待機します(図1左:培養脂肪細胞における、GLUT4-eGFP 過剰発現による蛍光画像)。